2010年3月21日日曜日

大局観と相場観

先の先まで読まなくては勝てないという点で将棋と投資は似ているところがあるように思います。将棋の強い人、いわゆるプロ棋士は、幾つかの候補手からの展開を数十数手先まで読むとも言われています(「緻密流」と評される佐藤康光九段は「コンピュータが一億手読むなら僕は一億と三手読む」という趣旨の発言をされたことで有名です)。ただ、将棋では読む力さえあれば勝てる、というわけでもなく大局観という局面を正しく形勢判断する力が棋力を決定する重要な要素となります。年齢を重ねると読む力が若いときより衰えると言われますが、ベテラン棋士でも若い棋士と十分にわたりあえることができるのは、この大局観によるところが大きいようです。

翻ってマーケットの世界に話を移しますが、「経済アナリスト」という立派な肩書きを持った方々が2009年の3月の大底のときに、「日経平均は5000円台になる」という予想を自信たっぷりに、色々な理由(理屈)をつけて語っていたのを思い出します。一年経った現在、彼らの予想(相場観)がひどいものであったのが分かったわけですが、正直、このようなひどい相場観を持ったアナリスト達がいまだにおくびれることなく、自分の相場観を述べているのを見るにつけ、「アナリスト」って気楽な職業だなあ、と思わざるを得ません。こうした「アナリスト」の予想におびえて、多くの個人投資家は二の足を踏んだに違いありません。「あの時買っておけば良かった」という声が至る所から聞こえてきそうです。

私は日経平均が7000円台になってからは、いくらなんでも安く売り叩かれていると思い、わずかばかり買い進めましたが、現金のありったけを使い切るような勇気がなく、今から振り返ると、おっかなびっくりの買い方だったなあ、と思います。買う時期も分散させるというやり方で、大きく負けない代わりに大きくは勝てない、というスタイルだった訳です。

ところで、将棋の羽生善治名人は将棋に勝つために必要な力を検討して、「決断する力」が一番大切だ、と述べておられます。また、直感の7割は正しい、とも述べています。私は羽生名人の結論は投資の世界にも当てはまるように思います。マーケット関係者が暴落の恐怖に慄いて、「もっと下がる」と言う時、彼らの意見は参考程度にとどめておき、最後は自分の相場観(大局観)が正しいと信じ、思い切って決断できた勇者が勝者となる、ということを羽生名人の以下の著書から読み取れるように思います。

決断力 (角川oneテーマ21)

私も、下手の横好きで将棋を指すのが三度の飯よりも好きなのですが、自分の棋風は投資スタイルと似ているところがあります。私は攻めるより受ける方に気を遣いがちで、悪手を指さないようにする、つまり負けないように気を遣うタイプで、棋士でいうと丸山忠久九段や木村一基八段のような棋風のようです。ただ、私は個人的には佐藤康光九段や谷川浩司九段のようなとてもアグレッシブな棋風の棋士が好きで、このことからも人は自分にないものを持っている人に憧れる、という世俗知は的を得ているように思います。

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