2010年8月29日日曜日

不況は人災です!

書評:不況は人災です! みんなで元気になる経済学・入門(双書Zero) 松尾匡 著  筑摩書房

株式投資を始めてから経済や金融に関する本を大分、読むようになりましたが、今回紹介する松尾さんの本はその中でも、とても分かりやすい良書だと思います。



経済学の主流派がケインズ派から新古典派へ、そして新ケインズ派に移行した歴史について触れながら、クルーグマンやスティグリッツといった新ケインズ派の基本的な考え方に基づいて日本の不況の原因について本書は説明しています。

松尾さんは現在の日本の不況の原因として日銀の金融緩和が手ぬるいこと、そしてこのような金融政策から派生する円高が日本の経済にいかに悪影響を与えるかを説明されているのですが、この説明は、円高が進んでいる現在、非常に説得力があるものに思えました。

松本さんはそこで日銀にインフレターゲットを設定させる、もっと大胆に金融緩和をさせるように提言しているのですが、そのような政策に反対する「反インフレ派」の人たちが実は富裕層の権益の代弁者であることを明らかにしています。中でも日本の社民党や共産党のような左派政党がこのような政策に反対することで富裕層の権益を守り、社会的弱者を逆に苦しめていることに気がついていない、という分析には非常に共感しました。

つい、先日クルーグマンもあるインタビューで日銀はインフレターゲットを設定して金融緩和をすべきで、このままデフレ状態が続いたら日本は確実に破綻する、と言っていましたが、全く松本さんの主旨に沿う主張で私も全く同意見です。

資産家の方は嫌がるかも知れませんが、やはり現金バブルになっている今日、少しでも現金自体の価値を下げるような政策が必要なのだと思います。先日、週間朝日でクレディスイスの白川さんが貯蓄課税を導入してはどうか、という提案をされていましたが、本書の中で、松本さんも白川さん同様、金融資産(特に現金)に税金をかける提案をされています(p.207)。これは実質的に金利をマイナスにするのと同じことですから、非常に効果的ないい考えだと私も思います。

最後に、特に面白かった所を紹介します。p.134でクルーグマンが自説を曲げたように曲解していいふらした人がいた、という所がありましたが、ご存知の方は「ああ、アノ人のことだな」、と察しがついたものと思います。名前は出しませんが、私も「アノ人」の御説には正直、うんざりというかひどい憤りを感じている一人です。

松本さんは最後に勝間和代さん、宮崎哲弥さん、飯田泰之さんの日本経済復活 一番かんたんな方法 (光文社新書 443)を紹介した上で「勝間さんとか宮崎さんとかはお嫌いですか」って聞いているんですけど、これはおかしかったです。勝間さんって支持者も多いですがアンチの方も多いので、ちょっと冗談めかしてこんな質問をされているんです。

私は勝間さん、嫌いではなく、むしろ非常に立派な方だと思っています。実際、日本の景気を良くする為には勝間さんを財務大臣、森永卓郎さんあたりを日銀総裁あたりに据えれば、とも思います。そうしたら、本当にデフレを止めさせるという決意が国内外のマーケットに電撃のように伝わって簡単にインフレを起こせる、と思います(ハイパーインフレになるという懸念はありますが、そうなればなったで、国の借金もチャラ、格差問題も一気に解決しますのでいいんじゃないでしょうか)。

今回の投稿、最後はちょっと過激だったかも知れません。特に資産家の方で気を悪くなされた方、そう怒らないで、寛大な心でクリックしてください。



2010年8月28日土曜日

株価が2倍になった!と思ったら含み損

私は一応、長期投資が基本スタンスなので短期トレードは殆どしません。そういう訳で持株の株価が上がったり下がったりしても、なるべく気にしないようにはしてるんですけど、株価が買値の2倍になった!って喜んでたら、あれよあれよ、という間に含み損が出ている、なんていうのはさすがにちょっと苦笑しちゃいますよね。今回は私の持株の中から、そんな銘柄を2つ、紹介します(どちらも株主優待とは無関係の新興株です)。

まずひとつめはマザーズ上場で臨床試験受託をしているリニカル(2183)です。

チャート画像
(出典:ヤフーファイナンス)

上のチャートは2年間のチャートです。私は最初、2009年の1月に700円の半ばで買ったのですが、2月ごろ、悪いIRが出て400円以下に急落しました(私は、そんなに悪い内容ではないと思ったのですが、何しろ地合いは今以上に冷え切っていましたから、投げが出たんだと思います)。3月に300円台でナンピンし、平均買値が400円台後半になりました。それが9月の衆院選挙まであれよ、あれよと言う間に1000円台を超え、株価は買値の2倍以上になりました。それからはチャートの示す通りです。

ふたつめはジャスダック上場で代金回収サービスを手がけているウェルネット(2428)です。

チャート画像
(出典:ヤフーファイナンス)

上のチャートは1年間のものです。ここは時々、間欠泉みたいにワーっと吹き上がるんですが、今年は3月にそれがありました(くわしくはこちらの投稿をご覧ください)。私がここの株を最初に買ったのは、先のリニカルと同じ日だったんです(ここも大体、7万円後半あたりで買いました。またその日は私の株デビューの日でもありました)。一時期、含み益が出ましたが、殆どは塩漬け状態が続きました。それから2009年11月頃、ドバイショックで相場が冷え切る中、ここの株は5万円を切る状態になりました。いくらなんでも安い、と思ってまたナンピンして平均買値も6万円前半になりました。3月にはストップ高を繰り返して13万円も超えたんですが(チャート見ると、上髭が出てますね)、また6万円前半まで下げて来ました。

株価が2倍以上になったらなったで、それは嬉しいのですが、その時は「もっと上がるはずだ」ってどうしても思っちゃうんですよね。そこで売れればいいのですが、私は根が欲張りなのでどうも売るタイミングを逃してしまうんです。

少しは売ることも覚えないとダメなのかなあ、と反省してます。

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サカタのタネ(1377)から花とみどりのギフト券が届きました

本日(2010年8月28日)、読んで字の如く、タネ屋さん(?)のサカタのタネ(1377)から花とみどりのギフト券が届きました。


ここは5月末が権利確定日で優待の内容は次のようになります。

100株以上
通信販売部会員組織「サカタ友の会」 への1年間無料入会資格(年会費2,600 円無料。期間は権利確定年の10月1 日~翌年9月30日まで)。 

・全国共通「花とみどりのギフト券」
100株以上 500円券1枚
500株以上 1,000円券1枚
1,000株以上 1,000円券2枚

100株以上で「サカタ友の会」に入会できるのですが、会員の特典は

1) 会報誌「園芸通信」が毎月送られる
2) サカタの通信販売でタネ、球根、苗類が10%割引になる
3) 年2回、「家庭園芸(花と野菜のカタログ)」が送られる
4) オリジナルカレンダーが年末に送られる

というものです。早速、今日、申し込み書を書きました。

株価は8月27日終値で1138円です。ファンダメンタル的に見て割安感は全くありません(予想PER42.30、PBR0.71、ROE1.8%)。ホールドしているのは本当に個人的な好みとしか言いよう、ありません。私のポートフォリオは農業や水産業、あるいは海運とかちょっとローテク産業がオーバーウェート気味なんですが、案外、そういう業種って人間の経済活動に絶対、不可欠なんですよね。社会に貢献してるのが分かりやすい、こういう会社を応援したくなるんです。まあ、のんびり、ホールド予定です。

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2010年8月27日金曜日

昭栄(3003)からお米券が届きました

本日(2010年8月27日)、不動産業の昭栄(3003)からお米券2キロ分が届きました。


ここのところ地合いが最悪なので株価も全くさえない状況です(本日の終値598円)。ファンダメンタルの指標は予想PERが12.35、PBRが0.59、ROEが4.9%です。優待は持株数に応じて次のようになります。

100株以上 2kgおこめギフト券
500株以上 5kgおこめギフト券
1,000株以上 10kgおこめギフト券

3年以上長期保有株主様向け優待
100株以上 1kgおこめギフト券追加進呈

3年以上売買しないでホールドすればお米券1㎏、追加してくれるというのはうれしいですね。ぜひこのような長期保有者向けの優遇措置を続けて欲しいです(もちろん、そのためには業績を安定させることが前提となりますが)。

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2010年8月12日木曜日

ある日、この国は破産します

書評: 日本経済の真実―ある日、この国は破産します 辛坊治朗・辛坊正記著 幻冬舎、 国家の品格 (新潮新書) 藤原正彦著 新潮社

先日来、円高が進行して一時、ドル円は84円台にまで上昇しました。本日の日経平均は年初来安値を更新しましたが、このままの為替水準だとしばらくは株価も低迷しそうです。

日本の国の借金が900兆を超え、国民一人当たりの借金は710万円になるという報道がつい先日あったばかりですが、やはりこうした日本経済の状況を考えると、この為替水準はちょっと行き過ぎという気がします(見方を変えれば、日本の個人投資家にとっては米国株を買うのにいい時期だと思います)。


昨日、寝転がりながら辛坊さんの上の本を読みました。しばらく前ですが、通勤していると前の座席の人がこの本読んでまして、「ある日、この国は破産します」って副題が目をひきました。よくエコノミストが言っていますが、借金を除いた国民の金融資産は約1000兆円なのでこのラインを超えない限り、国債は消化されると私も思います。しかし、いわゆる「札割れ」が起きて国債が暴落する「Xデー」まで実はそれほど時間はないようにも思います。日本人はこういう事態に目をつぶって現状維持を出来る限り続けようとしていますが、まず無理だと思います。

辛坊さんのこの本はそうした「日本の不都合な真実」(p.133)に国民の目を向けさせる上で重要な役割を果たしている、と思いますが、どうも読後の後味が悪いです。ちょっと上から目線でいわゆる「リフレ派」の経済学者を「クルクルパー」などと悪態をついたりしているのですが、どうも経済について話をする人は興奮しすぎで、礼節を欠いたような表現をやたら使うので、正直、こういう頭でっかちの人たちの道徳感覚にはちょっと閉口してしまいます。


先日読んだ藤原正彦さんの「品格」はその点、ウィットやユーモアに富んでいて、とても楽しい本でした。数学者なのに論理以上に感覚を重視されている点、経済よりも道徳を重視されている点、非常に共感できる点がありました。やはりベストセラーになるだけのことはあると思いました。

2010年8月7日土曜日

表が出れば私の勝ち、裏が出ればあなたの負け

先日、契約している変額個人年金の運用報告書が届きました。そして運用状況を見てひどくがっかりしました。以前の投稿でも書いたのですが、この変額個人年金というのは非常に悪質な金融商品です。ポートフォリオの内容は国内株式20%、外国株式20%、国内債券30%、外国債券30%という「おとなしめの」配分、また株式の組み入れ銘柄は内外ともに1000銘柄を超えており、ほぼインデックスと同質のポートフォリオになっています。

ここまでは特に問題ないのですが、ひどいのはここからです。この変額個人年金は契約時になんと4%(!)もの契約手数料が取られ、更に保険関係費用そして資産運用関係費用などと称して計2.865%(!)ものぼったくり報酬が毎年、元本から差っぴかれる、というインチキ商品です。この商品は購入時の元本をほぼ30%も毀損させているのですが、そういう不都合な事実には触れることなく、いまだに年、約3%もの報酬を無条件でむしり取っているのです。国債の長期金利ですら1%なのですから、3%の報酬というのは株式から得られるリスクプレミアム無しには確実に元本が毀損されることになります。つまり、販売サイドの保険会社からすれば「リターンはオレ様達のもの。リスクは顧客のもの」、と言っているようなものなのです。

リーマンショックが起きる数年前、普通預金を定期にしてもらおうと思って銀行の窓口に行った所、美人の銀行員のお姉さんの口車にのって、この変額個人年金と投資信託をかなり多額で購入したのですが、今から考えてもひどい話で、顧客の資産設計なんて金融機関には全く念頭にないということは後になって痛感しました。

このブログを読んでいらっしゃる方達は、殆どが金融リテラシーを持っていらっしゃる方ばかりだと思うので、こんな失敗はなさらないと思いますが、もし、投資をこれから始めたい、と思ってらっしゃる方がいたら、「投資信託」やら「変額個人年金」を銀行で買うのだけは止めた方がいい、と言っておきたいです。

本当にコワいのは刃物を持った精神異常者ではありません。優しげな笑顔で意図しない金融商品を勧誘する美人の銀行員ほどコワイ人はいないのです。

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2010年8月3日火曜日

世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか


特に好んで選んでいる訳ではないのですが、どうしても悲観一色の日本論が目にとまり、ついつい読んでしまいます。



日本が今回のリセッションから回復できない理由として野口さんは日本の産業の構造的な問題を取り上げています。日本の産業の根本問題は製造業の比率の高さであり、付加価値を作り出せない製品は今後、コモディティー化するため、労働賃金の安い新興国にシェアを奪われていくであろうと予想しています。

また、野口さんは株価に対しても非常に悲観的で「現在の日本の株式市場は、株価が企業収益と無関係に動くことを前提にしたうえでの投機の場になってしまっている」(p.89)、また「株価が現実の企業収益とかけ離れた水準を長期に継続できない」(同上)、とした上で「株価は長期的には企業収益で正当化できる水準に近づかざるをえない」(同上)、と主張しています。つまり、一言で言えば、今の株価水準は正当化できないほど高いレベルにある(つまり、もっと安くなるはずだ)、ということになると思います。

日本企業とアメリカ企業のROAを比較して日本企業の利益率が非常に低い、それに比べるとアメリカのIT企業(グーグルやアップル)、そして金融機関は今回のリセッションを完全に克服した、とも論じています。そして今後もアメリカの金融とハイテクセクターは高い利益率で成長するだろうと予測しています。

読後の感想ですが、野口さんの主張はおおまかに言えば正しいのでしょうが、ちょっと読者に誤った印象を与えるのではないか、という危惧があります。確かに少子高齢化や莫大な財政赤字などを考えると日本にはあまり明るい展望が持てないかも知れません。しかし、野口さんがしきりに礼賛するアメリカにも問題は山積しており、中には非常に深刻な問題を抱えていることも事実だと思います。

ちょっと失礼な物言いになるかも知れませんが、どうもアメリカで大学教育を受けた人は何でも「アメリカが一番」みたいな捉え方をする人が多いような気がしてなりません。主張は当たり前すぎて当然、それでも、何かちょっと一面的な主張のような気がしました。

そんな感じで、私はちょっと距離感を置いて本書を読んだのですが、一つ、非常に共感できる部分がありました。それはJALが将来の日本にダブって見える、という主張です。野口さんはJALの社員教育がなっていない理由を幾つか挙げていますが、ちょっとそこの部分は笑えました。日本人ももう少し頑張らないとだめですね。