2010年8月3日火曜日

世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか


特に好んで選んでいる訳ではないのですが、どうしても悲観一色の日本論が目にとまり、ついつい読んでしまいます。



日本が今回のリセッションから回復できない理由として野口さんは日本の産業の構造的な問題を取り上げています。日本の産業の根本問題は製造業の比率の高さであり、付加価値を作り出せない製品は今後、コモディティー化するため、労働賃金の安い新興国にシェアを奪われていくであろうと予想しています。

また、野口さんは株価に対しても非常に悲観的で「現在の日本の株式市場は、株価が企業収益と無関係に動くことを前提にしたうえでの投機の場になってしまっている」(p.89)、また「株価が現実の企業収益とかけ離れた水準を長期に継続できない」(同上)、とした上で「株価は長期的には企業収益で正当化できる水準に近づかざるをえない」(同上)、と主張しています。つまり、一言で言えば、今の株価水準は正当化できないほど高いレベルにある(つまり、もっと安くなるはずだ)、ということになると思います。

日本企業とアメリカ企業のROAを比較して日本企業の利益率が非常に低い、それに比べるとアメリカのIT企業(グーグルやアップル)、そして金融機関は今回のリセッションを完全に克服した、とも論じています。そして今後もアメリカの金融とハイテクセクターは高い利益率で成長するだろうと予測しています。

読後の感想ですが、野口さんの主張はおおまかに言えば正しいのでしょうが、ちょっと読者に誤った印象を与えるのではないか、という危惧があります。確かに少子高齢化や莫大な財政赤字などを考えると日本にはあまり明るい展望が持てないかも知れません。しかし、野口さんがしきりに礼賛するアメリカにも問題は山積しており、中には非常に深刻な問題を抱えていることも事実だと思います。

ちょっと失礼な物言いになるかも知れませんが、どうもアメリカで大学教育を受けた人は何でも「アメリカが一番」みたいな捉え方をする人が多いような気がしてなりません。主張は当たり前すぎて当然、それでも、何かちょっと一面的な主張のような気がしました。

そんな感じで、私はちょっと距離感を置いて本書を読んだのですが、一つ、非常に共感できる部分がありました。それはJALが将来の日本にダブって見える、という主張です。野口さんはJALの社員教育がなっていない理由を幾つか挙げていますが、ちょっとそこの部分は笑えました。日本人ももう少し頑張らないとだめですね。

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