まず、一言で言えばこの本は「良書」です。著者自身が「セゾン投信」という運用会社の社長であることから推察されますが、投資信託という金融商品について詳細な説明が書かれています。特に「日本には資産作りに適したよい投資信託がほとんどない(p.3)」、という不都合な真実を正直に記している点に好印象を持ちました。特に長期投資の利点について説明している第1章、金融機関の窓口で買う客が実は「カモ」られていることを記した第2章、投資信託という金融商品についての説明が書かれた第3章は投資初心者にとっても分かりやすく読めるだろうと思います。
第4章が本書のキモで長期投資に向いた投資信託が8つ上げられています。著者は時間がない読者はこの第4章だけ読んでほしい旨(p.8)を記していますが、私は正直なところ、この第4章だけはあまり読む価値がないと思っています。「セゾン投信」の社長という立場に立つ以上、仕方ないのかも知れませんが、8つ挙げられたお奨め投信のなかに自社の投信が2つも入っていました。甘めに考えるならば、スクリーニングという客観的なプロセスを経て得られた結果として自社商品が2つ入っていることもあるかも知れません。しかし、その商品(投資信託)の信託報酬は1つが0.74%、そしてもう1つが1.3%となっており、それほど魅力的な商品とは思えませんでした。
私自身、銀行の窓口で投資信託をよくわからないまま買わされた「カモ」で、経験上、投資信託がどんなにひどい金融商品であるかをよく知っているので、以前から数回にわたって投稿しましたが、「投資信託は全てダメ商品」、というのがより正確で正直な記述だと思います。買っていいのはインデックス連動型のETF位で、信託報酬が0.5%を超えるようなものは購入する側にとって不利な商品だと思います。
書評:『マッチポンプ売りの少女-童話が教える本当に怖いお金のこと』 マネー・ヘッタ・チャン著
あさ出版
この本は読み物としては面白いです。読んでいて吹き出してしまった箇所も幾つかありました。ただ、内容はメディアや金融について多少のリテラシーがある大人の読者にとっては常識的なことばかりなので、この分野での初心者が気軽に肩肘を張らずに読みたいという場合に限り、お奨めできる本です。
この本で語られる「物語」にはいずれも、ヘッテルとフエーテルという(ふざけた名前の架空の)登場人物がでてきますが、この2人は現実の世界でいかにもいそうなタイプとして描かれています。そうした読者に近しく思える彼らが、不条理このうえない世界で悲惨な目に合うというのが全ての物語の中心的なプロットです。物語は全て現実世界のパロディーですが、最後の物語(「インゴッドは死んだ」)だけは日本の財政破綻という未来の出来事について書かれています。
預金封鎖とハイパーインフレが起きるシナリオですが、個人的に一番笑ったのが『ジョジョの奇妙な冒険』のポルナレフみたいな髪型になったフエーテルが言う次のセリフ(p.177)です。
「あ・・ありのまま 今 起こったことを話すぜ!
「オレは銀行に自分の金を預けていると思ったらいつのまにか下せなくなってた。がんばって稼いだ金が再来週には使えなくなってた」
な・・ 何を言ってるのか わからねーと思うが オレも 何をされたのかわからなかった・・・。
頭がどうにかなりそうだった・・・。
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ。
もっとおそろしいものの 片鱗を味わったぜ・・・。」
私はこれを読んで吹き出してしまったのですが、もう笑っている場合ではないのかも知れません。私たちもフエーテルと同じ運命をたどらないようにインフレヘッジをしておいたほうが良いのかも知れません。
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